標とは疾病の現象であり、本とは疾病の本質です。
疾病の本質(病因)を治す原因療法を本治法といい、疾病の現象(症状)を治す対症療法を標治法といいます。
治療の根本原理は疾病の本質に対して治療を行なうことが重要ですが、病状の標本緩急の見極めに注意しなければなりません。それにより、病が急性ならばその局所症状に対し標治法を行い、病が慢性ならば病の本に対し本治法を施します。ときには標治法と本治法を同時に行うこともあります。
推拿療法では体表からの刺激を通じ、局所及び全身の生体機能を調整し、急性症状あるいは、慢性的な病因を除去します。
人体における陰陽のバランスが失調すると、偏盛や偏衰が生じ疾病が発生します。
その偏盛 ・偏衰に基づき、「有余」なるときは瀉法により取り除き、「不足」なるときは補法を用いて補う。これが治療の根本原則です。推拿療法では二十種類以上の手技方法を組み合わせることによって陰陽の相対的なバランスの回復をはかります。
補虚とは正気を補うことであり、気血津液の不足、臓器の機能衰退など人体の正気が不足している場合に用いられ、瀉実とは邪気を除去することであり、人体に邪気が存在している場合に用いられる治療原則です。
推拿療法では十四経絡や、その経絡上の主要な経穴を効率よく刺激し、気血津液を疎通させます。
気血津液が滞りなく流れることにより、五臓六腑が本来の働きになり身体を内臓から健康にし、邪気にも負けない力(免疫力)をつけます。
中医学では西洋医学よりも自覚症状に重点をおき、四診(望診・聞診・問診・切診)で得られた情報をもとに証(表裏・虚実・寒熱・陰陽)を定めます。
治療は証を決めることから始め、証がわからないと具体的な治療をすることはできません。
証に基づき治療方針を決め、実際の治療を行います。
同じ疾病であっても証が異なると異なる治療方針をとり、逆に異なる疾病であっても証が同じであれば同じ治療方針が立てられます。
中医学では個体差を非常に重視しており、疾病自身をみるだけでなく、患者の年齢や性別、体質、生活習慣、社会環境、心理状態などを考慮して治療を行います。また四季の変化や地域に応じて発生しやすい疾病の種類や特徴もあるため、治療を行う際にはこれらのことも考慮し適切に対処する必要があります。